山王病院神経外科・Dr.高橋浩一

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特発性正常圧水頭症について
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脳脊髄液減少症について

難治性の頭痛、頚部痛やめまい、耳鳴り、視機能障害、倦怠感など様々な症状を訴える疾患です。これらの症状は、立ち上がると悪化する傾向にあります。外傷が原因で生じる外傷性と、原因不明の特発性の場合があります。

本症は、画像上、異常所見を呈する事が少なく、自覚症状が主体のため、理解が得られにくい疾患です。実際、医学界でも認識が低い他、懐疑的な意見もあり、2012年、春の現段階で、医療保険適用になっていません。しかし、その症状は時には非常に辛く、根性だけはでは誰にも負けない、と自負しているような方々でさえ、日常生活にも支障を来たす事があります。さらに、医療従事者や周囲から理解されない事が多く、精神疾患などと判断される事があります。実際、心療内科を紹介され、通院されている方々も散見します。

歴史的には1930年代に、腰椎穿刺という、脊髄の周囲の髄液が存在する部位に針を刺す手技の後に、針穴から髄液が漏れる事により、頭痛が生じる低髄液圧性頭痛として報告されたのが、歴史的に最初とされます。
1990年代に、立ち上がると頭痛が生じる起立性頭痛を主訴とし、MRIで脳の下垂や硬膜のびまん性増強などの画像的特徴を示す疾患、低髄液圧症候群が報告され、その後、症例が多く認められるようになりました。この病態に対し、ブラッドパッチという脊髄を包む硬膜という膜の外側に自分の血液を注入し、髄液の漏れを止める治療が有効です。

そして2000年に入ると、現国際医療福祉大学熱海病院脳神経外科、篠永正道教授が、鞭打ち症などの外傷後に、頭痛、めまい、全身倦怠感などを呈する症例に、低髄液圧症候群が存在し、ブラッドパッチが有効である事を報告しました。この報告は、難治性の鞭打ち症後遺症患者達にとって、画期的な事であり、長い間、苦しい症状に悩んできた方々を救う治療となりました。

その後、ほとんどの症例で脳脊髄液圧が正常である事から、最近では脳脊髄液減少症と呼ばれています。

私は平成18年春より、山王病院にて美馬達夫部長の指導下、脳脊髄液減少症の診断・治療に携わらせて頂いています。治療症例は、800例を超えます。

脳脊髄液減少症に対する、山王病院でのブラッドパッチ治療有効率は軽微な改善も含めて約75%です。しかし本症、特に外傷性脳脊髄液減少症の歴史は浅いため、認知度は低く、反対意見も見られます。さらに、約20%の方々に治療効果が認められず、また稀に悪化例が存在するなどの問題も抱えています。

また、小児期発症の脳脊髄液減少症治療も積極的に行っています。山王病院では15歳以下に発症した脳脊髄液減少症患者は110例を超えます。治療成績は成人よりも良好であり、特に発症から治療までの期間が5年以下の症例は、有効率90%以上です。

小児期発症の脳脊髄液減少症に関する英文論文を、2012年1月に発表しました。

http://www.takahashik.com/blog/2012/01/cerebrospianl-fluid-hypovolemia-in-childhood-and-adolescence.html

小児例に関する詳細は、脳脊髄液減少症・子ども支援チームホームページ内、「小児期の脳脊髄液減少症」を参照頂けたら幸いです。

http://www.kodomo-cfh-support.net/

さらに慢性硬膜下血腫を合併した脳脊髄液減少症(特発性低髄液圧症候群)の治療もさせて頂いています。治療症例数は約50例です。

慢性硬膜下血腫を合併した脳脊髄液減少症は適切な治療により、予後が良好です。治療法は症状や画像所見から、保存的経過観察、ブラッドパッチ先行、手術先行など、個々の症例により検討すべきと考えています。また20-60歳代の比較的若年発症の両側慢性硬膜下血腫の場合は、脳脊髄液減少症の合併を念頭に入れるべきと思います。
平成24年2月28日記